「ムードトラッカー」という言葉を、手帳やアプリの紹介で見かけたことがあるかもしれません。なんとなく「気分を記録するもの」という見当はつくものの、いざ日本語で意味を調べようとすると、しっかりした説明が意外と見つからない——そんな言葉のひとつです。
この記事では、ムードトラッカーとは何かを、できるだけ平易な日本語で整理します。言葉の意味、海外での広がり、手書きの手帳とアプリでのやり方の違い、そして多くの人がつまずく「続かない理由」とその越え方まで、順番に見ていきます。あわせて、気分記録は医療行為ではない、という前提もはっきりお伝えします。気分の記録に興味はあるけれど、何から始めればいいか分からない——そんな方の入り口になればと思います。
ムードトラッカー(mood tracker)とは、英語の mood(気分・機嫌)と tracker(追いかけて記録するもの)を合わせた言葉で、その日の気分を、簡単な形でこまめに記録していく方法、またはそのための道具を指します。日本語では「気分記録」「気分の記録ツール」と言い換えるのがいちばん近いでしょう。
ふつうの日記が出来事や考えを文章で書くのに対して、ムードトラッカーの特徴は「気分」という一点に的をしぼり、しかも文章を書かずに済ませることが多い点にあります。たとえば、その日の気分を「とても良い・良い・ふつう・悪い・とても悪い」の5段階から選ぶ。色やマークで残す。表に印をつけていく。やり方はさまざまですが、共通しているのは、書くというより選ぶ・印をつけるに近い、ということです。
なぜ気分だけに的をしぼるのかというと、文章を書くのは続けるのが難しいからです。そのぶん、気分という残しやすいものに絞ることで、長く続けやすくしている——というのが、ムードトラッカーの基本的な発想です。気分を記録すること自体の意味は気分を記録すると何がいいのかのページで詳しく扱っています。
ムードトラッカーという言葉は、もともと英語圏で広く使われてきました。背景のひとつに、バレットジャーナルという手帳術の流行があります。ノートに自分でレイアウトを作って暮らしを記録していくやり方で、その一部として、1か月の気分を一覧できる「ムードトラッカーのページ」を手作りする人が増えました。マス目を気分の色で塗りつぶしていくと、1か月の気分の移り変わりがひと目で分かる——という見せ方が広まったのです。
同じころ、スマートフォンのアプリでも、気分を毎日記録するものが数多く登場しました。手書きの手間をかけずに、タップだけで気分を残せて、自動でグラフにしてくれる。こうしたアプリの広がりもあって、ムードトラッカーは「気分を手軽に記録する習慣」として、海外ではかなり一般的なものになっています。
日本でも、手帳好きの人たちのあいだでバレットジャーナルが知られるようになり、その流れで「ムードトラッカー」という言葉も少しずつ広まってきました。ただ、日本語でていねいに意味や続け方を解説したものはまだ多くなく、英語の情報を手探りで読んでいる人も少なくありません。この記事が、その隙間を少しでも埋められればと思います。気分そのものとの付き合い方は気分の波との付き合い方でも触れています。
ムードトラッカーには、大きく分けて「手書きでつける」やり方と「アプリでつける」やり方があります。どちらが良いという話ではなく、向き不向きが分かれるので、事実として並べてみます。自分に合いそうなほうを選ぶ手がかりにしてください。
ノートや手帳に、自分でマス目を引いて気分を色で塗ったり、印をつけたりするやり方です。自由にデザインでき、ページをめくって眺める楽しさがあるのが魅力です。手で書く時間そのものが、気持ちを落ち着ける人もいます。一方で、レイアウトを作る手間がかかること、ノートを持ち歩かないとつけられないこと、集計やグラフ化を自分でやる必要があることは、続ける上でのハードルになりがちです。
スマートフォンのアプリで、気分を選んでタップするだけで記録できるやり方です。手間が少なく、いつも持ち歩いているスマホで完結し、グラフや集計を自動でやってくれるのが強みです。一方で、手書きならではの自由さや、塗る・めくるといった手ざわりの楽しさは薄くなります。また、アプリによっては記録がどこに保存されるか(端末の中か、外部のサーバーか)が異なるので、気になる人は確認しておくとよいでしょう。
ざっくり言えば、つける時間や手ざわりそのものを楽しみたいなら手書き、とにかく手間なく長く続けたいならアプリが向きやすい、という傾向があります。もちろん両方を使い分けてもかまいません。大切なのは、自分が続けられるほうを選ぶことです。
ムードトラッカーに限らず、気分や日々の記録が続かない理由を突き詰めていくと、多くの場合「つけるのが面倒」「ひと手間が重い」という、ごく単純なところに行き着きます。意志が弱いからではありません。気分の記録は医療行為ではなく、つけてもつけなくても誰にも怒られない習慣なので、ほんの少しの面倒くささでも、簡単に途切れてしまうのです。
手書きの手帳なら、ノートとペンを取り出してマス目を塗る、その一連の動作が地味に重い。アプリでも、開くのに時間がかかったり、入力する項目が多すぎたりすると、だんだん開かなくなります。続けるための鍵は、気合いではなく、つける手間をどこまで小さくできるかにあります。三日坊主を意志の問題ではなく仕組みで越える考え方は三日坊主は直さなくていいに、続かない理由全般は日記が続かない理由にまとめています。
だからこそ、ムードトラッカーは「書かずに」続けるのが理にかなっています。文章を書こうとすると、何を書くか考える手間が生まれ、それが負担になります。気分を選ぶだけ、印をつけるだけにとどめておけば、考える手間がほとんどない。短い記録を続けることの効きめは一言日記のすすめでも触れています。
ムードトラッカーを、無理なく長く続けるための現実的なコツを並べます。気合いではなく、仕組みの話です。
ためた気分の記録は、自分の状態を自分で見張る「セルフモニタリング」の材料になります。考え方はセルフモニタリングとはのページにまとめています。記録は、つけることがゴールではなく、後からそっと自分を知るための材料だと考えると、肩の力が抜けて続けやすくなります。
最後に、はっきり書いておきたいことがあります。ムードトラッカーは、あくまで自分の気分を残して、後から傾向を眺めるための記録であって、医療行為ではありません。気分を記録すること自体が、不調を治したり、心の状態を診断したりするものではない、ということは正直にお伝えしておきます。
記録をつけていると、気分が低い日が続いていることに自分で気づくことがあります。それは記録の良いところですが、気づいた先で、書いて様子を見続けるのは別の話です。気分の落ち込みが何週間も続く、眠れない、食欲がない、日常生活に支障が出ている——そうした状態が長引くときは、記録を続けるより、まず休むこと、そして専門の相談窓口や医療機関に相談することを優先してください。
ムードトラッカーは、調子が安定しているときに自分のリズムをゆるく知っておくための、静かな道具です。そのくらいの距離感で付き合うのが、いちばん無理がないと思います。書かずに、選ぶだけ。続けられる範囲で、気楽に始めてみてください。
その日の気分を、簡単な形でこまめに記録していく方法、またはそのための道具のことです。日本語では「気分記録」と言い換えるのが近いでしょう。ふつうの日記と違って、文章を書くのではなく、気分を5段階から選んだり、色やマークで残したりと、「書く」より「選ぶ・印をつける」に近いのが特徴です。文章を書く手間が少ないぶん、続けやすくなっています。
どちらが優れているという話ではなく、向き不向きの問題です。つける時間や、塗る・めくるといった手ざわりそのものを楽しみたいなら手書きの手帳が、とにかく手間なく長く続けたい、集計やグラフを自動でやってほしいならアプリが向きやすい傾向があります。両方を使い分けてもかまいません。自分が続けられるほうを選ぶのがいちばんです。
気分の記録は医療行為ではなく、不調そのものを治すものではありません。できるのは、自分の気分を残して、後から傾向を眺めることです。記録のおかげで気分が低い日の続きに気づくことはありますが、気づいた先で書いて様子を見続けるのとは別の話です。落ち込みや不眠が長く続く、日常に支障が出ているといったときは、記録より休息を優先し、専門の窓口や医療機関に相談してください。
ムードトラッカーが続かない最大の理由は、つける手間です。ひびつみは、その手間をできるだけ小さくした、書かない日記です。気分を5段階から選んでタップし、やったことをタグで残すだけ。ひとことは書きたい日だけ、10秒あれば終わります。続けていくと、ただ気分を眺めるだけでなく、週に一度「散歩がある日は気分が平均より上向きやすい」のように、あなたの記録から見えた事実が返ってきます。励ましも占いもなく、褒めも採点もしません。記録は端末内に保存されます。
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